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2022/11/15

知っておきたいRFID ”基礎編”

RFID
知っておきたいRFID ”基礎編”

はじめに

最近、コロナ禍の影響もあり人の接触を減らしたり、従業員の省力化を目的とした無人レジが導入されている売り場が増え、利用する機会も増えています。

こうした無人レジですが、二つの種類があります。一つが商品についているバーコードを読み取るタイプ。スーパーやコンビニなどの無人レジの多くがこのタイプです。もう一つがバーコードを読み取ることなく商品情報が読み取られるタイプです。ユニクロで導入されているのがこのタイプになりますが、これはRFIDという無線技術を使ったテクノロジーを利用した仕組みが活用されています。

RFIDとは、経済産業省が小売り業界の抱える人手不足やサプライチェーン全体の食品ロスなどの課題の解決に向けた作業効率化とデータの利活用を実現するための切り札として期待している技術の一つです。本稿ではRFIDの基本的な特徴についてご案内していきます。

RFIDとは

RFID(Radio Frequency Identification)とは、ICタグまたはRFタグと呼ばれる情報の読み書きができるICチップと電波を利用したワイヤレス通信を行う仕組みのことを言います。

RFIDが導入されている代表的な例として、店舗での盗難防止があげられます。これは商品にRFタグを付与することで、店舗の出入り口に設置したゲートが会計を済まさずに持ち出した商品を検知するものです。

他にも身近なところでは、回転ずしの会計で食べた分のお皿にハンディターミナルをかざすと一瞬で料金がはじき出されているものがあります。お皿に埋め込まれたRFタグとハンディターミナルの間で通信を行うことでお皿に触れることなく会計ができるようになっています。

こうした例はRFタグを再利用することが前提となっていますが、最近では前述したアパレル業界のユニクロが再利用されずに使い捨てとなる商品タグにRFIDを組み込みました。これは非常に大きな変化で、従来RFIDの弱みの一つであったコストの問題が大きく見直されてきたことを表しています。

RFIDの特徴について

同じような目的で利用されている技術にバーコードがあげられます。バーコードは商品等の情報をバーコード化して印刷し、それを専用端末等で読み取ることで情報の伝達ができる仕組みです。多くのスーパーやコンビニエンスストアのレジ、宅配便等の物流の現場や倉庫での物品の管理に利用されています。バーコードの方が歴史的にも古く、また導入がしやすいことから現在広く活用されており、QRコードよりも多くの情報が取り扱いできる規格も開発されています。

RFIDとバーコードは同じような用途で利用されることが多いです。RFIDの特徴や強みを知る上でバーコードとの比較で考えるとより理解が簡単になります。

情報量の取り扱い

RFIDもバーコードも情報を伝達するために利用されています。その為により多くの情報を取り扱えることが性能を比較する上で重要な要素と考えることができます。実際にバーコードもQRコードが開発されたことでより多くの情報を取り扱えるようになり、従来の商品コードなどの情報以外にもっと複雑な情報の取り扱い(ホームページのURLなど)ができるようになりました。

RFIDはバーコードやQRコードに比べて更に多くの情報量を取り扱うことができます。また大きな違いとしてバーコードやQRコードは印刷された情報しか取り扱えないのに対して、RFIDでは情報の更新(書き込み)が可能となっております。そのためタグの再利用が可能となっています。入退出用のIDカード(特にゲスト利用分)など都度利用者の情報を書き換えて再利用ができるのでバーコードでは出来ないRFIDの特徴を生かした利用用途といえます。

読み取りについて

バーコードは印刷したコードを読み取るため、一つ一つ端末で読み取りをする必要がありますが、RFIDは電波を利用するため、電波の届く範囲であれば一度に複数のRFタグを一瞬で読み取ることが可能です(利用する電波の規格によって数メートル先まで読み取ることが可能です)。当社が出展する展示会でも機材の持ち出し管理、特に一度に多くのアイテムを持出、返却するときにRFタグを活用すると作業効率が劇的に改善するような相談をいただくことがあります。

また遮蔽物にも強いので箱の中に入っているRFタグを箱を開けずに読み取ることが可能です。これは非常に大きな強みで、例えば棚卸業務を行う場合に倉庫の高い棚に置いてある箱に入っているものを降ろして箱を開けることなく読み取ることができるのです。同じ作業をバーコードで実施した場合には、脚立を用意して、二人掛かりで荷物を降ろして、更にはこの中から対象のアイテムを一つずつバーコードで読んでいく作業を行うことになります。この点だけを見てもRFIDはバーコードに比べて安全で且つ、作業効率が非常に高いと言うことができます。

更にバーコードは汚れなど印字内容に影響が出ると読み取りができなくなりますが、RFIDではそうしたトラブルがありません。ただし、液体や金属は電波を反射してしまうためにうまく読み取れないケースがあります。そうした対象物にRFタグを利用する場合には液体に強いRFタグや金属に強いRFタグを利用することで問題を回避することができる場合があります。また対象物以外でも保管場所や並べ方などによっては電波の通りづらいケースも見受けられるようです。その為RIFDを導入する際には取り扱うものや利用場所に応じて適したRFタグを選択することが重要となってきます。当社でも利用環境でのRFタグのメーカーやアンテナメーカーと協力した検証を強くお薦めしています。

コスト

紹介してきたように非常に優れているRFIDですが、バーコードに比べてランニングコストが高いという弱点があります。一般的なRFタグは1枚当たり約10円程度と言われており、バーコードと比べるとコスト高と言わざるを得ません。更に金属用などの特殊なRFタグは20円以上することもあります。この点がこれまでRFIDがバーコードに比べて市場で大きく導入されていない大きな要因と考えられています。

ただし、RFIDを導入すると作業効率が大きく上がることが期待できます。これまで2名で行っていた棚卸作業が1名でできるようになる、入出庫の作業時間が半分以下になるなど生産性が上がることで従来の作業コストを削減すること可能となります。そうしたトータルのコストで比較した場合にRFタグのコスト高を受け入れても十分な削減効果を望めるケースもあるかもしれません。

RFIDの今後の動向

このようにコスト高という弱点はありますが、それも今後は改善されるかもしれません。

経済産業省は2025年までにコンビニの全商品にRFIDタグを取り付ける「電子タグ1000億枚宣言」や、ドラッグストアのスマート化を推進する「ドラッグストアスマート化宣言」の中でRFタグの活用することを発表しています。こうした取り組みが広がるとRFタグがこれまで以上に市場で流通することでコストが下がることが期待できます。実際にこの宣言と合わせて大日本印刷は2025年までに単価1円のICタグ・RFタグを目指すと発表しております。

こうした流れの中で大手アパレルのユニクロがRFタグを利用した無人レジの導入を実現したことはRFIDの普及に大きなうねりを生み出しています。今年に入り東レが完全塗布法という従来よりも低コストの製造方法を確立したことを発表し事業化へ向けた動きを加速するなど、コスト高という弱点が改善されるのも遠い話ではないかもしれません。このように身近にRFタグを利用した仕組みの導入が進むことでコストの課題も改善されるのではないでしょうか。

ミクロスソフトウエアではDX技術アドバイザサービスとして様々な企業様のお悩みにお答えしております。RFIDで業務改善をご検討される際にはぜひご相談ください。

参考事例「番組制作現場での機材利用状況の見える化(RFID持ち出し監視)

文責:比企健太@営業統括部