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2022/11/28

注目のリスキリングを解説  ~中小企業でもできるDX人材育成の3ステップ~

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注目のリスキリングを解説  ~中小企業でもできるDX人材育成の3ステップ~

2022年10月、岸田首相は “リスキリング” を経済対策に組み込むことを表明しました。以後、リスキリングは注目用語としてGoogleなどでも検索される機会が増えており、2022 ユーキャン 新語・流行語大賞にもノミネートされています。

日本ではリスキリングという言葉を耳にする機会は少ないですが、欧米では2018年、ダボス会議で有名な世界経済フォーラム(WEF)で提唱されて以来、デジタル人材育成の国策として各企業で多額な投資が進められています。

いざデジタル人材育成と言われても容易なことではありません。特にデジタル化途上にある中小企業にとっては、どのように推進すれば良いのか皆目見当もつかないことと思います。

そこで本記事では、

  リスキリングとは何なのか?
  ・DX人材の実状と企業内での選定方法
  ・中小企業でもできるリスキリングの活用とDX人材育成

について解説していきます。

リスキリングとは何なのか?

そもそもリスキリングとは何でしょうか?従来、リスキリング(=Re-Skilling)は失業者の技術再教育による就職支援の文脈で使用されていました。

近年では社会全体がアナログからデジタルへの過渡期であることや、それに伴うDX時代の到来ということもあり、デジタル人材=DX人材の育成の意味合いが強くなっています。

政府は2022年10月28日、「物価高克服・経済再生実現のための総合経済対策」の中で人材投資として個人のリスキリング支援に5年間で1兆円を投入すると表明しました。DXなどの成長分野の労働人口を増加させることで、企業間・産業間の労働移動の円滑化を計らい、構造的な賃上げ実現する狙いがあります。簡単に言うと、個人に対してDX人材教育を通して条件の良い就職や転職を支援し、社員のキャリアを支援する企業に対しては助成率を引き上げるというものです。

DX人材不足と言われるが・・・

そもそもDX人材とは何でしょうか?ガートナージャパンは2021年8月、「デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進に必要となる5つの役割」を公表しました。興味のある方は一読ください。

その中で、DX人材は能力やスキルに応じてビジネスプロデューサー、テクニカルプロデューサー、エンジニア、デザイナー、チェンジリーダーの5つの役割に細分化されています。少々大雑把に言うと、DX人材に必要なスキルは、

  ビジネススキル(業務変革と推進)
  テクニカルスキル(新しいIT技術分野)

と言えます。

以前のブログでも紹介したように「2025年の崖」問題は、老朽化したレガシーシステムでは増え続けるデータ量やスピード重視のビジネスモデルに対処できなくなるというものです。この問題を解決すると期待されているのがDX人材です。

なぜDX人材が不足しているのか?

どの企業もDX人材が不足していると言われていますが、実はDX人材以前にIT人材(従来の技術者)が足りていないのが現実です。経産省のデータには2030年にIT人材は約80万人不足するだろうという予測もあります。私たちのようなIT開発企業間でも日々人材の争奪戦が繰り広げられていますが、特に新しい技術領域(データサイエンス、AI、IoT、クラウドなど)に精通した技術者は希少で高単価であるのが実のところです。

下図は国別にデジタル人材の不足状況(データ解析などの分野)を表したものですが、日本における「大いに不足している」「多少不足している」の割合は65.8%と高く、DXのリテラシー不足や人材育成が課題となっています。

総務省(2022)「国内外における最新の情報通信技術の研究開発及びデジタル活用の動向に関する調査研究」

また、IGSが2021年8月に国内の大手企業に対して行ったDX業務に関する意識調査では、社員の44%がDXにネガティブか無関心であることが分かりました。

主な理由は「一過性で終わる」「具体的に何をしたらよいかわからない」「失敗して評価が下がるのが怖い」といったものでした。中でも驚いたのは会社の中核であるはずの40代の中間管理職層の意欲が特に低いという結果でした。

これらの結果から多くの企業でDXの必要性や課題を認識しているにも関わらず、人材育成の体制が整っていないことが分かります。経営層から社員に対してDXの重要性や目的が浸透できておらず、主体的に取り組もうと意気込む人材が台頭してこないのだと推測されます。

DX人材育成の実状

DX人材不足に対処するため、内製化を図ろうと中途人材採用や教育に力をいれる企業が増えています。

中途採用に関しては、上で見た通りそもそもDX人材自体が少ないため、それなりのコストを投資して新たな社員を迎える必要があります。

教育面に関しては、”DX人材を短期間で育成します” といった類の研修サービスがこの数年で随分増えました。研修内容を拝見すると、5つの役割毎に初級から上級まで幅広い内容でDXリテラシーの向上やスキルに合わせた専門教育を行っており、お値段もそれなりに高価です。

外注に頼らず社員を教育し内製化することでフットワークを軽くし、会社にノウハウを貯めていきたい気持ちは分かります。その一方で、内製化によるアプリケーション開発(例えばローコードやノーコードを活用)で目的を達成できず、私たちへサポートの依頼があるケースも増えています。

主な理由はテクニカルスキルです。現実的に未経験者が2か月の研修を受けたからといって実務レベルのデータモデルを扱ったり、まだ発展途上で情報量の少ない新技術を容易に扱えるはずがないのです。ローコード開発などはシンプルな業務フレームワークであれば容易に作成することができますが、その先にある痒い所に手が届くようなユーザビリティやデータ活用の恩恵を得るには専門的な知識が不可欠です。

内製化を目指した人材の確保や育成は中長期視点で行うべきで、費用対効果が得られるまでには時間がかかるものです。メリットももちろんありますが、デメリットの方が強く出てしまうと、本来スピードを重視すべきDXの推進自体が滞ってしまいます。

DX人材はどのように選定すべきか?

上図は、経産省(2021)「第2回 実践的な学びの場ワーキンググループ」からの出典です。デジタル社会の人材像を階層で表現したもので、経営者をトップIT人材とし、その下にDX(推進)人材、業務プロセスの遂行に関わるビジネスパーソンが配置されています。見ての通り、DX人材は企業のトップと一般社員とをつなぐ大事な役割を担います。

企業でのDX人材の選定方法は以下の順を踏むと良いと考えます。

経営戦略に反映

DXは経営(CEO, CIO, CDXO等)のコミットメントがないと失敗すると言われています。DXを通じて実現する中長期的な会社の将来像を経営戦略に反映しましょう。

社員への浸透

DX人材だけが戦略を理解していれば良いわけではありません。社員全体(上図の”その他のビジネスパーソン”)が会社のDXの目的を知り、慣れ親しんだ既存業務への影響を理解する必要があります。研修サービスやe-ラーニングなどを通してDXの”いろは”を身につけましょう。

DX人材選定

DX推進者に必須となる適性は興味と主体性です。新しい知識を自ら独学で学び続けられる人材でないと継続した成果は得られないでしょう。

ビジネススキルの役割を担う人材には経験豊かな30代~40代の中間層が望ましいです。企業には企業独自の理念、風土、文化、情報資産(データ)があり、DX戦略の実行にはそれらに対する深い造詣が不可欠となるからです。DXのゴールはデータを利活用することで新たなビジネスモデルを産みだすことです。私たちのような外部アドバイザーは幾らでも相談に乗ることはできますが、推進の中核となるべきは自社業務の一長一短を理解した人材です。

テクニカルスキルの役割を担う人材には20代-30代の人材が望ましいです。デジタルネイティブ世代で新しい技術の習得にも抵抗が少ないためです。テクニカルスキルを持つ人材は、(政府の思惑通りですが) 市場価値が非常に高くなるため企業にとって人材流出は悩みの種となるでしょう。育成と流出が堂々巡りしないよう、対象者が現在の職場で活躍し相応の対価を得られるようにする仕組みも検討が必要です。

中小企業でもできるDX人材育成の3ステップ

デジタル化さえも進んでいない、研修や教育にお金をかけられないといった悩みを持つ中小企業でのDX人材はどのように育成するべきなのでしょうか?

3つのステップで考えます。

STEP1 兎にも角にもデジタル化から始める

デジタル化はDXの入り口です。貴重な情報資産を取りこぼさないよう、まずは社内業務のデジタル化を進めるべきです。ミクロスなら、デジタル化を進めながらDXの全体構想からデータ利活用提案、推進までトータルにサポートいたします。

STEP2 リスキリングを活用して社員のDXリテラシーを向上させる

テクニカル人材の育成は時間もコストもかかります。中長期視点で考えましょう。それでも直近の2025年の崖問題も控えていることから、DXの波に乗り遅れないように対処しなければなりません。

迅速に成果を出すには”手を動かす”ことより”知見“に重きを置くことが肝要です。中小企業ではビジネススキルとテクニカルスキルの役割は兼務となることも予想されますが、それでも構いません。ひとまずはDXについて広く浅く習熟できていれば、自社の課題や改善点が見えてきます。スキルの習得のために高額で長期間の育成サービスに手を出す必要はありません。1日で終わる無料の初級コースなどを受講すれば、後は書籍等での学習も可能です。学習プランは弊社でご紹介が可能です。

リスキリングには助成を得ることができますが、現時点では具体的なことが不明となっておりますので、情報は随時アップデートします。2022年6月16日にはGoogleの日本法人などが中心となって「日本リスキリングコンソーシアム」も誕生しました。条件にあったトレーニングプログラムの検索・申し込みなども可能となっておりきますのでご覧ください。

STEP3 不足部分は専門家を頼る!でも業者にお任せはダメ

DXを推進していく過程ではビジネス面でもテクニカル面でも思い通りに進まないことが多々起こるものです。ある程度の”知見”を得ていれば、専門家を積極的に活用しましょう。結果としてコストが安く推進できる場合が多いです。ミクロスではテクニカルサポートだけでなく、考え方やプロセスの共有など担当者様が実践を通して独り立ちできるようにしっかり伴走いたします。お気軽にお問い合わせください。

DXの成功可否はお客さま自身にかかっています。ビジネススキル人材(ビジネスプロデューサー)を中心にメンバーは重大な経営課題を認識し、自ら考えて社内の変革をリードする存在でなければなりません。人選は適性や主体性を重視しましょう。社員の適性やDX知識を評価するサービスもあり、弊社でご紹介が可能です。

まとめ

今回はリスキリングについて解説するとともに、中小企業でもできるDX人材育成方法について考えてみました。IT市場は人不足に悩まされており、特にデータサイエンティストやAIといったDX推進に必要とされている先端技術の専門家は希少価値が高いままです。中小企業での採用となると特に困難を極めるでしょう。かといって自社で専門家を育てるには、時間とコストがかかります。それでも時代に乗り遅れないようにするにはデジタル化、DX化は避けて通ることができません。社員の最低限のDXリテラシーを向上させ人選が終わったら、専門家をうまく活用しながらDXを推進していきましょう。

文責:かつをのだ@営業統括部