最近メディアで頻繁に耳にするようになったDX(デジタル・トランスフォーメーション)ですが、中小・中堅企業の経営者の皆様には「DXって何?」といった疑問をお持ちの方が結構いらっしゃると思います。また、IT担当者様にも「DXを推進しろ」と言われたものの「何から始めればよいの?」と頭を悩ませていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。
本記事では、
・なぜいまDXが騒がれているの? ・企業にとってのDXとは? ・DXとデジタル化って何が違うの? ・クラウド導入はなぜ必要?
といった基本的な疑問を分かりやすく解説していきます。
実は大手企業よりも中小・中堅企業の方がDXやクラウド導入を着手しやすいケースが多いのです。これからDXやクラウド導入を検討されている皆様はぜひご一読下さい。
デジタル庁創設によりDX時代へ
経済産業省が2018年9月に公表した「DXレポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~」により、国内のDX化は加速すると思われていました。ところが、実際にDX推進に努めている企業は一部で、大半の企業ではTokyo 2020に合わせて「まずはテレワークを試してみよう」くらいの腹積もりであったと思います。そんな中で思いも寄らなかった事態が起きてしまいます。新型コロナウイルスの世界的流行です。
社会環境は急速に不安定となり、現在も先が見えない状況が続いています。新型コロナウイルスは日本がITガバナンスに弱く、海外諸国に大きく後れを取っていることを露呈させました。2020年秋、菅内閣は発足と同時にデジタル社会形成の本丸として「デジタル庁(2021/9/1~)」を創設することを発表しました。デジタル庁のHP(製作中)には以下のように書かれています。
世界では”New Normal” という言葉が生まれましたが、企業を含めた社会全体が新たな環境に適応した変革を最優先の取組として捉えようとしていることが伝わります。
日本政府が総理の肝煎りプロジェクトとしてDXを進めるには理由があります。それは、DXレポートのタイトルにも入っている「2025年の崖」問題です。「2025年の崖」とは、日本の企業で利用しているシステムの6割が、老朽化(セキュリティの脆弱性を含む)、複雑化、担当者退職によるブラックボックス化など、いわゆる”レガシー”と言われる課題を抱えており、今後の世界的なデータ量の爆発に対応できる時代に則したビジネスモデルに対応できなくなるというものです。さらには固定電話網のIP網への移行も控えており、こうした変化に対応できない企業は崖から落ちるように競争力が低下するためこのように呼ばれています。2025年~2030年の間に最大で12兆円/年もの損失をもたらす可能性が指摘されています。
DXにまつわる誤解と真の目的
そもそも企業にとってのDX(デジタル・トランスフォーメーション)とは何なのでしょうか。業務内容や業務プロセスを文字通りにデジタル化することで達成されるものでしょうか?そうではありません。デジタル化はあくまで業務効率化を目的とした手段であり生産性向上にこそつながりますが、それだけではDXを達成したとは言えません。市販のグループウエアなどを導入しクラウド化を進めた企業がDX化に成功したと謳っている例も耳にしますが全くの誤解です。闇雲にデジタル化を進めることは、後になって本来実現したいことができないといった事態を招く可能性があります。
DXの真の目的は、デジタル技術の恩恵により生み出される社会課題の解決や新たなサービスや価値の提供、つまり新たなビジネスモデルを創造することで、顧客満足度を向上させ企業が存続、発展していくことにあります。したがって、企業がDXを考えるとき、自社の強みを将来どのように活かしたいのか、現状の課題は何か、どういう計画で進めるかといった戦略の立案が不可欠となります。
なぜDX実現にクラウドが必要なのか
全ての企業においてデジタル化が経営課題の1つであることは疑いありません。中でも中小・中堅企業においては、いまだに大切なデータを紙媒体で保管していたり、承認作業をハンコで行うケースも珍しくありません。働き方改革やコロナ禍によりテレワークの必要性は高まりましたが、自宅から社内のデータに自由にアクセスできなければ、本末転倒です。実際に約38%の会社員が書類の確認・整理作業のためだけに出社しているという調査結果もあります。紙からペーパーレス、つまりデジタル化は今の時代の業務効率化に必要不可欠なのです。
2020年末に更新された「DXレポート2」でも、従業員や顧客の安全を守りながら事業継続を可能とする上で直ちに取り組むべきアクションとして、以下の4点を挙げています。
せっかくデジタル化したデータは有効に活用できなくては意味がありません。いつでもどこでも必要なデータにアクセス出来て、社員同士で円滑な情報共有やコミュニケーションが図れる環境を整える必要があります。データは集計、分析を繰り返すことで新たなビジネスを産む武器となります。
「デジタル化とデータ活用」、これらの課題をクリアしないことにはDX実現へのステージに進むことはできません。そして、その課題の解決を手助けするのが安全性、柔軟性、俊敏性を兼ね備えたクラウドというインフラなのです。
実は中小・中堅企業こそクラウド導入が容易
とは言え、中小・中堅企業の経営者やIT担当の方には、DXなんて自分たちには当分関係ない事と考えられる方もいらっしゃるかと思います。実際にDXに取り組んでいる企業は10%にも満たない状況です。しかし、中小・中堅企業こそクラウド導入は容易なのです。
大手企業では、複雑な縦割り組織の中で異なるITベンダーのレガシーシステムやツールが乱立し、それらを無理くり連携させて運用している傾向にあり、クラウド導入には莫大な時間と費用がかかることが多いです。結果、デジタル投資には慎重にならざるを得ません。現場のユーザーもDXを推進したい経営層の意に反して、今まで慣れ親しんだシステムを継続利用できれば良いという保守的な考えが浸透しており、思いのほか加速化していません。
一方で中小・中堅企業は比較的組織構造がシンプルで柵も少ないため、短期間で一定の成果がでやすい傾向にあります。その為に社員の運用を止めるような大きなテコ入れを行うのではなく、着手できることを計画的、段階的にクラウド化する(スモールスタート)ことが容易です。「社内システムの移行は慎重に行いたいが、まずはグループウエアから導入してみたい」などといった要望も短期間で叶います。決裁権を持つ経営者の強い意思と旗振りさえあれば、クラウド導入はとんとん拍子に進めることが可能です。
2022年はクラウド導入の絶好の機会
2021年3月末に政府は21年度の税制改正として「DX投資促進税制」を創設しました。クラウド導入などデジタル技術の新設・増設費の一定額を控除する制度です。適用を受けるためには下図にあるような認定要件を満たす必要があり、資料提出や審査もあるようですが、これからDX推進を考えている企業にとっては魅力的な制度です。手続きの詳細については今後ガイドラインなどが整備されると思われます。
また、中小企業・小規模事業者(自営など)向けですが、DX導入費用の公的補助として中小機構による「IT導入補助金2022」という制度もあります。低感染リスクのビジネスかそれ以外で条件は異なりますが、補助率は最大で1/2~2/3、費用は30万円~450万円までの補助をうけることが可能です。こちらも適用に当たっては審査がありますので詳しくはHPをご確認下さい。
以上のように政府が企業のDX推進に力を入れている今がクラウド導入のチャンスです。この機会にぜひ検討を進められてはいかがでしょうか。
まとめ
DXレポート2では企業の文化自体を変革する必要性と共に、コロナ感染対策の一時しのぎではないリモート人材活用が必要だと説かれています。デジタル化、クラウド導入、テレワーク導入といった課題は、これから中長期的に中小・中堅企業がDXを推進する上でのはじめの一歩と言えるでしょう。
文責:かつをのだ@営業統括部